松岡正剛

石坂泰三は結局6期12年にわたって経団連会長を務めるのだが、途中で大阪万博という大仕事が入った。 ところが、これがさっぱりうまくいかない。暗礁に乗り上げたり矛盾が出てくると、二進も三進も進まない。原因は担当者が、変更を拒否して、そういうときにばかり身を堅くするからだった。とくに関西の役人はふだんは陽気で勝手なことを言っているのに、組織のなかでは自分単位の半径しかもっていない。これをどうしたら突破できるのか。まず小坂善太郎に頼んで鈴木俊一を紹介してもらい、事務局長になってもらった。 石坂によると、日本人には何かの変更を迫ると「もう決まったことですから」と変更を断る連中が7、8割はいるという。さらにどうしても変更を迫ると、「いや、そんなことをすると私の責任ということになりますから」と頑張る。これは責任をとろうとしているのでも、頑張っているのでもなく、責任逃れでしかないと石坂は見抜いている。そのため、こういうときには「じゃあ、責任をとってもらっていいよ」と言うことにしている。 これで人事が次々に一新できた。「それは私の責任ですから譲れません」と言う連中を、じゃあ、責任をとってやめていいよと言うことにしたのだ。